#1 恒久的な節税対策

koukyuu

一時的な節税対策は、翌年支払う税金を大きく減らすことができますが、課税の繰り延べ(つまり、翌期以降に課税される)となるものもあり、考えて使わないといけません。一方で、恒久的な節税対策は、本質的な節税対策が多い点が特徴です。恒久的な節税対策を講じつつ、一時的な節税対策も組み合わせる方法が効率的ですので、順番に確認してみましょう。

節税対策を大きく3つの体系(青色申告系、掛け金系、その他)に分けて解説します。

 

青色申告系

青色申告

≪方法≫

確定申告を白色で行っている場合、「青色申告承認申請」を行い変更する。

 

≪効果/注意事項≫

複式簿記なら65万円、単式簿記なら10万円の青色申告特別控除

 

青色申告をすることができる人は、 不動産所得、事業所得、山林所得のある人。

 

(原則

新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出。

 

(新規開業)

業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出

 

 

青色申告専従者給与

≪方法≫

「青色事業専従者給与に関する届出書」、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出する。

 

≪効果/注意事項≫

 「青色事業専従者給与に関する届出書」の税務署提出期限はその年の3月15日まで。新規事業や新たな雇い入れは開始日から2か月以内

 

 青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業(*1)専ら従事(*2) している人に支払った給与(*3) は、届け出金額内(*4) かつ適正な金額内(*5) で、必要経費に算入できます。

 

なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者(*6)扶養親族(*7)にはなれません。

 

(*1)

不動産賃貸業の場合、事業的規模(貸家なら5棟、アパートやマンションなら10室以上)で行っている場合に限られます。

(*2)

「専ら従事」とは?年間6か月以上の勤務。他にパートなどを行っていてもよいが、パートが一日7時間である等の場合は青色事業者の業務に「専ら従事」していると認められない。(=妨げにならない程度のパートであればよい)

(*3)

帳簿上の支払いだけでなく、青色専従者の口座に振り込みを行う必要があります。現金手渡しで行う場合、青色専従者から領収書を入手する必要があります。未払計上が認められるのは、相当の理由が存在し、短期的に支払いがなされる場合です。

(*4)

届け出金額が上限となるため、少し多めに届け出をしたほうが有利です。

(*5)

税金の世界は常識がモノをいう世界であり、「働いた分を支払う」ことが懸命です。(参考:東京都の最低賃金は時給907円)

(*6)

年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の同一生計配偶者。

(*7)

年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の同一生計配偶者以外の親族。

 

 

欠損金繰越および繰戻

≪方法≫

青色申告をする。

 

≪効果/注意事項≫

事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合、損益通算しきれない金額は、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。

 

また、前年も青色申告をしている場合は、損失の繰越しに代えて、その損失額を生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。

 

繰越も繰戻も確定申告期限内に行う必要があります。 

 

 

 

掛け金系

小規模企業共済

≪方法≫

小規模企業共済に加入して所得控除をうける

 

≪効果/注意事項≫

個人事業主が加入できる共済。毎月最大7万円の掛け金で全額所得控除の対象となる。また、前納分もその年の所得控除の対象となる。(168万円=7万円×12ヶ月×2年)

 

20年加入し続けないと、解約の際に元本割れとなってしまう。

 

 

確定拠出年金

≪方法≫

毎月一定額を年金として掛けて、所得控除する。

 

≪効果/注意事項≫

企業型確定拠出年金における企業の拠出分は、全額が損金算入、個人の拠出分および個人型確定拠出年金の拠出分は全額が所得控除になり、解約時も税制面で優遇されています。

 

 

中小企業退職金共済

≪方法≫

中退共に加入して所得控除をうける

 

≪効果/注意事項≫

掛け金は全額必要経費になりますが、全従業員を加入させなければなりません。

 

役員等は加入できません。

 

解約には全従業員の同意が必要です。

 

 

 

その他

事務所家賃(水道,光熱費,通信費等)

≪方法≫

自宅を事務所とする場合、面積案分して事務所部分を経費とする

 

≪効果/注意事項≫

自宅を事務所としている個人事業主の場合、家賃(共益費、火災保険、住宅ローン利息)の一部(事務所で使っている部分)を必要経費(*1)とすることができます。事務所部分が分かるように区分し、面積比で計算した根拠を残しておく。

 

同一生計の配偶者、親族に支払う家賃は必要経費とすることができません。(受け取った側も収入にはならない、家賃に限らずその他の資産も同様)

 

ただし、例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります。

 

(*1)

白色申告者でも自宅兼オフィスのオフィス部分を経費とすることができますが、条文の書き方では青色申告のほうが認められやすい記載になっています。

 

 

自動車

≪方法≫

自家用車を営業に使用している場合、使用分を経費とする。

 

≪効果/注意事項≫

ガソリン代、修理代、駐車場代、保険代等を業務用と自家用に案分して、業務用部分を必要経費とすることができます。

 

 

交通費/慶弔見舞金

≪方法≫

証憑が残らない交通費や慶弔見舞金の場合、出金伝票を作成し、経費とする。

 

≪効果/注意事項≫

電車等は記録が残らないため、こまめに記録することが効果的です。記録した後は出金伝票を作成してください。

 

タクシー等レシートをもらえる移動を行った場合は、忘れずに領収書を入手してください。

 

お取引先営業担当者等への慶弔見舞金も経費とすることができます。相手の名前と目的を記載して出金伝票を作成してください。

 

 

交際費

≪方法≫

事業に必要な交際費を経費とする。

 

≪効果/注意事項≫

個人事業主の場合、交際費に上限は存在しません。

 

交際費の定義は「得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」です。したがって事業に少しでも関係があれば交際費として計上することができます。

 

記録として「年月日」、「参加者氏名」、「参加人数」、「金額」、「店舗所在地」を残す必要があります。飲食店の場合、レシートには「参加者氏名」以外記載されていることが多いので「参加者氏名」をメモしておきます。

 

 

税金

≪方法≫

一部の税金は必要経費とすることができる。

 

≪効果/注意事項≫

事業税は全額必要経費になります。その他、登録免許税 (*1)、事業所税、自動車税、固定資産税(*2)等は業務用の部分に限って必要経費になります。

 

所得税、住民税、罰金等は必要経費になりません。

 

国民健康保険料、国民年金は必要経費になりません。(所得控除の対象になります)

 

(*1)

特許権等は取得価額に参入、自動車等は必要経費か取得価額算入か選択できる。

(*2)

固定資産税の第4期分の税額は、原則として賦課決定を受けた年分の必要経費になりますが、その翌年2月が納期となっていますので、納期の開始の日である翌年分の必要経費とすることもできますし、又は実際に納付したその後の年分の必要経費とすることもできます。