#1 事業所得その1

#1 事業所得その1

#1 事業所得その1では、事業所得とは何か、事業所得の計算方法のうち≪総収入金額に含めるべきもの≫、≪収入の計上時期≫、≪通常販売価額よりも低い価額での販売について(低額譲渡)≫、事業所得と雑所得の違いについて、記載します。

 

#2 事業所得その2では、事業所得の計算方法のうち≪必要経費≫について、記載します。

事業所得とは?

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人の所得をいいます。
ただし、 不動産の貸付けによる所得は原則として不動産所得、山林の譲渡による所得は原則として山林所得になります。

 

 

事業所得の計算方法

事業所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて、計算します。また、青色申告の要件を満たしていれば、さらに青色申告特別控除額を差し引くことができます。

事業所得 = 総収入金額 - 必要経費 - 青色申告特別控除(※)

(※)差し引くことができるのは、青色申告の要件を満たしている青色申告者だけです。

 

 

総収入金額に含めるべきもの

 総収入金額には、それぞれの事業から生ずる売上金額のほかに、次のようなものも含まれます。

収入の内容収入金額
1.金銭ではなく物や権利などを受け取った場合受け取った時の物や権利などの時価
2.商品を自家用に消費したり贈与した場合仕入価額と通常販売価額70%うち、いずれか大きい金額
3.商品などについて損失を受けたことにより、支払いを受ける保険金や損害賠償金等受け取った金額
4.空箱や作業くずなど事業付随の収入
受け取った金額
5.仕入割引やリベート収入受け取った金額

 

 

収入の計上時期

収入として計上する時期について注意が必要です。

取引の結果、代金としてお金を貰えば当然収入に計上する必要がありますが、お金を貰っていなくても収入に計上しなければならない時もあります。税法では、「収入すべき権利の確定した日」に収入を計上する必要があると定めています。つまり、請求書をまだおくっていなくても、代金を貰っていなくても収入すべき権利が確定していれば、収入を計上する必要があります。

 

例えば、機械の販売業者が12月にお客から注文を受けて、その日のうちにお客に機械を届けて備え付けを完了し、お客の検収までもらえたとします。この場合、お客からの支払いが年明け1月であったとしても、また、代金請求をまだしていなくても、12月の収入に計上する必要があります。まだお金はもらっていなくても、お金を貰う権利が確定したと考えられるためです。

 

収入すべき時期をいつとするかは、それぞれの取引の内容、性質、契約の取決め、慣習などによって判定します。国税庁ホームページに事業所得をはじめ、様々な所得の収入時期について記載されていますので参照してください。画一的に決まるものもあれば、事業者が選択して適用できるものもあります。ポイントは、自分の収入すべき時期を決定したら、毎年継続してその方法を適用することです。毎年自分の都合で変更することはできませんのでご留意ください。

 

 

通常販売価額よりも低い価額での販売について(低額譲渡)

事業を行っていると、時に通常販売価額よりも安い価額で、販売することがあります。このような場合、注意すべきことがあります。

 

税法では、通常販売価額の70%未満で販売しても、最低でも通常販売価額の70%で収入計上する必要があります。ただし、①型崩れなどによる値引き販売、②広告宣伝の一環として行う値引き販売(バーゲンセール)、③金融上の換金処分のいずれかに該当する場合は、通常販売価額の70%で収入計上する必要はなく、販売した価額で収入計上できます。①~③に該当する場合は安く売って当たり前と考えられるためです。

 

なお、通常販売価額の70%未満で販売することを、「低額譲渡」と言います。

 

 

事業所得と雑所得の違い

雑所得とは、どの所得区分にも属さない所得のことです。会社員が副業を行っている場合などに事業所得となるのか雑所得となるのかが問題となることがあります。

 

理解を深めるために少し踏み込んで、何を事業所得と定義するのかについての判例がありますので確認してみましょう。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における事業遂行性の有無、その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断する。

少し難しいですが、ポイントは営利性のある仕事を反復継続的に行っていることです。雑所得に分類されるよりは、事業所得に分類されたほうが、損益通算や青色申告特別控除といったメリットがあるため有利です。

 

本業(会社員)の他にFX、株式取引、物品販売などを副業で行っている場合、副業から生じた損失を損益通算することは、様々な過去の事例から判断すると、難しいようです。事業として行っているというよりは、投機的な利ざやを稼ぐためと税務署に判断されるためです。税務署は社会通念を非常に重視します。事業所得となるのか雑所得となるのかは、ケースバイケースで、税務の世界でもグレーな部分です。そのため、副業を事業所得として申告しようとする場合は、事前に税務署に相談してみるとよいでしょう。