#6 損益通算

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10種類の所得計算が終わったら、次は損益通算です。

 

損益通算とは、不動産所得、事業所得、譲渡所得(総合)、山林所得等の計算から生じた損失を、ほかの所得から差し引くことをいいます。

 

損益通算を行うことで、担税力(税金の負担能力)に応じた税負担が実現できるとの考えに基づいて定められている制度です。損益通算は、特段事前に届け出は不要ですが、損失を翌年以降に繰り越す場合は届け出が必要です。

損益通算の対象となる損失、ならない損失

損益通算の対象となる損失

損益通算できる損失は限定されており、次の損失に限られています。

1.不動産所得、事業所得、譲渡所得(総合)および山林所得から生じた損失
2.上場株式等の譲渡により生じた損失(※)

※上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得に限って損益通算が可能です。

 

 

損益通算の対象とならない損失

・利子所得、退職所得からは損失が発生せず、配当所得、給与所得、一時所得、雑所得から生じる損失は、損益通算の対象となっていません。

 

・生活に通常必要でない資産(趣味、娯楽、保養、鑑賞目的で保有する不動産、ゴルフ会員権、1個あるいは1組で30万円を超える貴金属、書画、骨董等)の譲渡により生じた損失は、損益通算の対象となっていません。

 

・不動産所得の損失のうち、生活に通常必要でない資産の貸付けにより生じた損失は、損益通算の対象となっていません。

 

・不動産所得の損失のうち、土地(地上権等含む)の取得に要した借入金の利子に該当する部分は、損益通算の対象となっていません。

 

・不動産所得の損失のうち、特定組合員の不動産所得損失は、損益通算の対象となっていません。

 

・株式の譲渡から生じた損失は、損益通算の対象となっていません。

 

・先物取引から生じた損失は、損益通算の対象となっていません。

 

・土地建物等の譲渡から生じた損失は、損益通算の対象となっていません。

 

 

 

損益通算は、グループごとに!

総合課税と分離課税

所得税の計算体系図をみると、大きく総合課税グループ分離課税グループに分かれています。損益通算はこのグループごとに行うことが原則です。

分離課税グループの中に短期譲渡所得と長期譲渡所得がありますが、分離課税グループの中で損益通算できますが、総合課税グループの譲渡所得と損益通算することはできません。

 

 

損益通算の順序

損益通算を行うにあたり、所得を経常所得グループ非経常所得グループにわけます。

経常所得グループ・・・利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得

非経常所得グループ・・・譲渡所得、一時所得

 

①経常所得グループで損益通算

不動産所得、事業所得から損失が生じた場合は、他の経常所得から差し引きます。

 

②非経常所得グループで損益通算

譲渡所得の総合課税グループで損益通算しても損失が残っている場合は、50万円の特別控除後で2分の1前の一時所得から差し引きます。

 

③経常所得に損失が残っている場合

①の損益通算後、経常所得グループに損失が残っている場合は、非経常所得グループから差し引きます。このとき差し引く順番は、短期譲渡所得、長期譲渡所得、一時所得です。

 

④非経常所得に損失が残っている場合

②の損益通算後、非経常所得グループに損失が残っている場合は、経常所得グループから差し引きます。

 

③又は④の損益通算をしても損失が残る場合は、山林所得(特別控除後)、退職所得(2分の1後)の順で損益通算します。山林所得で損失が生じた場合は、①又は④の通算後の経常所得グループ、総合譲渡所得、一時所得、退職所得の順で差し引きます。

 

 

 

損失の繰り越し(損益通算後)

損益通算をしても、損失が残ってしまった場合、この損失を3年間繰り越すことができます。翌年所得が生じれば、繰り越した損失をその所得から差し引くことができます。

 

なお、青色申告者は損失の全額を繰り越すことができますが、白色申告者は変動所得(漁業や養殖による所得、印税、原稿料、作曲料などの所得)の損失と被災事業用資産の損失(災害が原因で生じた損失のこと)だけしか繰り越すことが認められていません。

 

損失の繰り越しを行うためには、その年に確定申告をする必要があります。また、その年以降も継続して確定申告書を提出する必要があります。

 

上場株式等の譲渡損失は、その年分の申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得と損益通算できます。損失が残る場合、翌年以後3年間にわたり、確定申告することで繰り越して控除することができます。