#6 一時所得

#6 一時所得

一時所得とは、営利目的の継続的行為や労務提供、あるいは資産の譲渡以外から生じた所得で、臨時的な性質の所得です。抽象的でわかりにくいかもしれませんが、具体例を参照していただければ、特徴がわかります。

一時所得に含まれるものの具体例

賞金や福引等の賞金品

賞金品は一時所得となりますが、「宝くじ」や「TOTO」は非課税のため一時所得に含まれません。従って、当選しても確定申告の必要はありません。また、業務に関連して受けるものは一時所得に含まれません。

 

 

競馬、競艇、競輪の払戻金

競馬、競艇、競輪等の当選金は一時所得になります。

最近(平成27年3月)の最高裁判例で、本来一時所得となる馬券の当選金を、雑所得として認定した事件がありました。一時所得の場合、当選金収入から差し引くことができるのは、そのレースの馬券代だけですが、雑所得の場合、はずれ馬券が全て必要経費となります。大きな違いがあり、世間の耳目を集めたニュースとなりました。このようなケースはまれだと思いますが、紹介します。

 

<事案の概要>

Aは馬券を自動購入できるソフトを使用して、インターネットから長期間(多数回、頻繁)網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ていた。Aはその所得を正当な理由なく確定申告書を期限までに提出しなかったという所得税法違反の事案であり、当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得に当たるか雑所得に当たるか、外れ馬券の購入代金が所得税法上の必要経費に当たるか否かが争点となった事案。

 

<判決の概要>

~(略)以上によれば,被告人が馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では,払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとした原判断は 正当である。

 

~(略)以上によれば,外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金という費用が当たり馬券の 払戻金という収入に対応するなどの本件事実関係の下では,外れ馬券の購入代金に ついて当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる とした原判断は正当である。

 

 

生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金

満期保険金等を一時に受け取った場合、一時所得となります。(年金で受領した場合、公的年金等以外の雑所得になります)保険料を負担していた人以外の人(配偶者等)が保険金を受け取った場合、贈与税が課税されます。なお、死亡保険金は別途定めがあります。

 

 

一時所得の計算方法

一時所得は、総収入金額から収入を得るために支出した金額を、差し引いて計算します。

一時所得 = 総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額

上記計算を行って一時所得を算出しますが、他の所得と合算する前に一時所得の金額は2分の1にされます。少しわかりにくいため、所得税の計算体系を参照してください。

 

 

総収入金額に含めるべきもの

総収入金額には、現金以外にも、商品券等の経済的な便益も含みます。商品券の場合は、額面金額で総収入金額に含めてください。金券以外の物でもらった場合は、その物の時価で総収入金額に含めます。

 

 

収入を得るために支出した金額に含めることができるもの

収入が発生する直接の原因となる支出を、収入を得るために支出した金額に含めることができます。満期保険金の一時金受取の場合、それまで支払った保険料等の総額を差し引くことができます。満期一時金受取の場合、保険会社から計算書が送付されてきますので、その計算書に沿った記載・申告を行えば問題ありません。

 

 

特別控除額

一時所得は50万円まで特別控除を行うことができます。総収入金額から収入を得るために支出した金額を差し引いた残額が50万円未満の場合、特別控除を行うことができる金額は、その金額になります。