青色申告が有利なのはわかっているけど、難しいからずっと白色申告をしているという個人事業主の方は多いです。
「#4 青色申告、白色申告その1」では、青色申告のメリットと青色申告をするための事前準備について解説します。
「#5 青色申告、白色申告その2」では、、青色申告者と白色申告者がしなくてはならないこと、そして青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件について、解説します。
青色申告のメリット
比較してみよう!
青色申告と白色申告を比較してみます。
項目名 青色申告 白色申告
青色事業専従者給与 労務対価として相当と認められる金額であれば、給与は全額必要経費 1人当たり50万円が限度
(配偶者の場合は86万円)
青色申告特別控除 最大で65万円を所得から差し引くことができます
(要件に該当しない場合は10万円)―
純損失の繰越控除、
繰戻還付損失が発生した場合、3年間損失を繰越すことができます。あるいは前年の所得から還付をうけることができます
―
少額減価償却資産の
特例取得価額30万円未満の減価償却資産を、全額その年の必要経費にすることができます ―
貸倒引当金の計上 個別評価、一括評価(事業所得のみ)の貸倒引当金を計上できます 個別評価の貸倒引当金を計上できます
棚卸資産の評価選択 税務上有利な棚卸資産評価方法である低価法を採用できます ―
青色申告のメリット
やはり、青色申告の最大のメリットは65万円の所得控除を受けられる点です。
65万円の控除と10万円の控除の最大の違いは、帳簿の付け方にあります。65万円の控除を受けるためには複式簿記で記帳する必要があります。
白から青へに記載の通り、会計ソフトを用いれば複式簿記を理解する必要はありません。
その他にも65万円の特別控除を受ける要件がありますので、「#5 青色申告、白色申告その2」の≪青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件≫を参照してください。
シミュレーションすると・・・
所得が500万円の場合、青色申告と白色申告で所得税と住民税の額をシミュレーションしてみます。
所得500万円の場合 青色申告 白色申告
所得税 約37万円 約51万円
住民税 約41万円 約47万円
合計 約78万円 約98万円
所得500万円の場合、青色申告をすることで約20万円の節税になっています。
所得を20万円増やすために、収入をどれだけ増やす必要があるのかを検討してみてください。利益率が50%だとすると、収入を40万円増やさないと所得は20万円増えません。
収入を40万円増やす努力よりも、適切に会計ソフトを使って、青色申告で節税することも大切なことです。
青色申告特別控除以外にも
配偶者や従業員がいる場合、青色事業専従者給与が全額必要経費という点も見逃せません。所得税は累進課税(所得が増えるほど税率が高くなる)のため、可能な限り所得を分散することが大きな節税につながります。
例えば、一人で所得500万円の場合、所得税と住民税の合計は約78万円(上表参照)ですが、二人で所得250万円ずつ(合計500万円)の場合、所得税と住民税の二人分合計は約45万円です。所得を分散することで約33万円の節税です。
配偶者や親族に事業を手伝ってもらっている場合、青色事業専従者として届け出を行い、所得を分散すると自分を含めた身内にお金を残すことができます。
青色申告をするために
メリットの多い青色申告ですが、採用するためには、事前の届け出が必要です。下の≪青色申告の事前準備≫で詳細に解説します。
補足:白色申告のメリット
結論からいいますと、今は白色申告のメリットがほとんどありません。
平成26年(2014年)1月から事業所得、不動産所得および山林所得のある方すべてに対して、記帳と帳簿の保存が義務付けられました。(所得税の申告の必要がない方も記帳と帳簿の保存が必要です)
それまでは、一部の方(事業所得等が300万円超)に、記帳と帳簿の保存義務がありました。そのため、記帳と帳簿の保存義務がないことが、最大のメリットであった白色申告は、現在ほとんどメリットがありません。
青色申告の事前準備
青色申告を新たに行う方(従来白色申告の方が青色申告に変える場合)、新規に開業した方でそれぞれ「青色申告承認申請書」を期限までに提出する必要があります。
・(原則)新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出。
・(新規開業)業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出
届け出をしよう!
新規に開業した方は同時に合わせて、「個人事業の開業届出書」を税務署に提出すると効率的です。「個人事業の開業届出書」の提出期限は、開業後1ヶ月以内です。また、青色事業専従者がいる場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」、を期限までに税務署に提出します。
・「青色事業専従者給与に関する届出書」の税務署提出期限はその年の3月15日まで。
・新規事業や新たな雇い入れは開始日から2か月以内。
受付印を忘れずに
「青色申告承認申請書」、「個人事業の開業届出書」、「青色事業専従者給与に関する届出書」は、それぞれ原本のコピー(白黒可)を取って、税務署に提出した際に収受受付印をもらうことを忘れないようにしてください。
「青色申告承認申請書」、「個人事業の開業届出書」、「青色事業専従者給与に関する届出書」が認められた場合でも、その通知がくることはありませんので、自分で控えを取って証拠として残しておくことが必要です。
税務署への提出は、持参でも郵送でも可能です。(郵送の際は自宅住所を記載した、切手添付済みの封筒をいれてください)
事業専従者給与は慎重に検討
青色事業専従者の給与については、慎重に検討する必要があります。給与の金額によっては、青色事業専従者とならないほうが得な場合もあるからです。詳細は節税対策を参照してください。