#5 青色申告、白色申告その2

#5 青色申告、白色申告その2

#4 青色申告、白色申告その1」では青色申告のメリットと青色申告をするための事前準備について、解説しました。

 

「#5 青色申告、白色申告その2」では、青色申告者がしなくてはならないこと、そして青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件について解説します。

青色申告をするために!

青色申告者がしなくてはならないこと

青色申告をするためには、「青色申告承認申請書」を提出していることが前提です。未提出の場合は、「#4 青色申告、白色申告その1」の≪青色申告の事前準備≫を参照してください。

 

そして、確定申告の際に「貸借対照表」と「損益計算書」を作成できるように、正規の簿記(複式簿記)の方法で記帳・保存することが原則です。なお、「貸借対照表」、「損益計算書」および複式簿記での記帳は、会計ソフトを用いれば特別の知識は不要です。

 

簡易な記帳(「現金出納帳」、「売掛帳」、「買掛帳」、「経費帳」、「固定資産台帳」のような帳簿を備え付けて)をするだけでもよいことになっています。

 

これらの帳簿及び書類などは、原則として7年間保存することとされていますが、書類によっては5年間でよいものもあります。以下の表を参照してください。

保存が必要な帳簿、書類名保存期間
「仕訳帳」、「総勘定元帳」、「現金出納帳」、「売掛帳」、「買掛帳」、「経費帳」、「固定資産台帳」など7年
「貸借対照表」、「損益計算書」、「棚卸表」などの決算関係書類7年
「領収証」、「小切手控」、「預金通帳」など現預金取引関係書類7年(※)
「請求書」、「見積書」、「契約書」、「納品書」、「送り状」など取引関係書類5年

(※)※前々年分所得が300万円以下の場合は5年です。

 

帳簿・書類の保存は紙で行うことが原則です。会計ソフトを使用して作成した帳簿・書類であっても、紙に出力する必要があります。

なお、一定の手続きと要件を満たすことで、紙ではなく電子データで保存することができます。

 

 

 

電子帳簿書類保存について

帳簿・書類を紙ではなく電子データで保存するためには、3か月前に税務署に申請し、承認を得る必要があります。

 

税務署から承認を得れば、帳簿だけではなく、領収書や請求書といった書類もスキャナで読み込み保存することが可能となります。電子データとして、保存した帳簿・書類の原本は廃棄することができます。

 

なお、電子データで保存するためには、会計記録(帳簿)の変更履歴を残す必要があります。会計ソフトを使い始める時に、電子帳簿書類方式を選択できますので、利用する際は選択してください。

 

最大で7年間、帳簿・書類を保存する必要がありますが、個人事業主の場合、紙で出力してもそれほど場所をとりません。電子データ保存は便利ですが、事前申請や要件が煩雑であり、使い勝手がそれほどよくないと感じている方が多いようです。

 

そのため、個人事業主は紙での保存がオススメです。電子データ保存にチャレンジされる方はこちらを参照してください。

 

 

補足:白色申告者がしなくてはならないこと

「#4 青色申告、白色申告その1」に記載の通り、白色申告の場合も、記帳と帳簿の保存が義務付けられました。 記帳は、一つ一つの取引ごとではなく、その日の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法(参照:国税庁ホームページ)で記載してもよいことになっています。帳簿・書類の保存期間は以下の通りです。

保存が必要な帳簿、書類名保存期間
収入金額、必要経費を記載した帳簿7年
業務に関して作成した収入金額、必要経費以外の帳簿5年
決算に関して作成した棚卸表等の書類5年
業務に関する請求書、納品書、送り状、領収書等の書類5年

青色申告の場合と同様に、帳簿・書類の保存は紙で行うことが原則です。会計ソフトを使用して作成した帳簿・書類であっても、紙に出力する必要があります。

 

 

青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件

65万円の青色申告特別控除をうけるためには、以下の5つの要件をクリアする必要があります。

① 期限内に確定申告書を提出すること
② 複式簿記で記帳していること
③ 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添えて提出すること
④ 事業所得あるいは事業的規模の不動産所得であること
⑤ 発生主義を採用していること

①期限内の申告について

確定申告期限に間に合うよう日々記帳し、疑問点は早めに税務署や税理士会に質問することで、十分に期限内申告することができます。

 

②複式簿記について

会計ソフトを利用すれば、複式簿記を理解する必要はありません。会計ソフトが自動的に複式簿記での記帳をサポートしてくれます。

 

③貸借対照表と損益計算書について

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)と損益計算書(そんえきけいさんしょ)は、会計ソフトを用いて記帳していれば、会計ソフトのボタンを押すだけで出力することができます。

 

④所得の種類について

事業所得であれば問題ありません。事業的規模の不動産所得とは、アパートであれば10室以上の貸し付け、貸家であれば5棟以上の貸し付けによる所得をいいます。

 

⑤発生主義について

発生主義とは、会計の考え方のひとつです。対義語として、現金主義があります。現行制度では、発生主義がより精緻な会計方法とされています。

それほど難しくなく、税理士に頼らなくとも十分に対応可能です。発生主義による記帳方法については、記帳方法を参照してください。