#2 事業所得その2

#2 事業所得その2

節税や税務調査でポイントとなるのは、総収入金額でも青色申告特別控除額でもなく、必要経費です。収入の場合、≪総収入金額に含めるべきもの≫であるのに対して、経費の場合≪必要経費に含めることができるもの≫になっています。税務署からしてみれば、所得が増えれば税金も増えるため、なるべく収入は多く、経費は少なくなるようにしたいわけです。節税をするためには、反対になるべく収入を少なく、経費は多くなるようにする必要があります。

必要経費に含めることができるもの

必要経費に含めることができるのは、収入に対応する売上原価と販売費及び一般管理費です。

必要経費 = 売上原価 + 販売費及び一般管理費

 

 

売上原価とは?

原価率という言葉を耳にすることがありますが、原価率は売上原価を売上高(収入)で割ることで求めることができます。例えば80円で仕入れたものを100円で販売している場合、原価率は80%になります。必要経費に含めることができる売上原価は、年間の合計ですので、当期首(1月1日)の棚卸資産(仕入れた在庫等の金額合計)に当期(1月1日~12月31日)の仕入高を足して、当期末(12月31日)の棚卸資産残高(売れ残った在庫等の合計金額)を差し引くことで計算します。

売上原価 = 当期首棚卸資産残高 + 当期仕入高 - 当期末棚卸資産残高

当期末棚卸資産残高は、翌年の「当期首棚卸資産残高」になります。

なお、棚卸資産には原材料、仕掛品、半製品、製品、商品など事業に係るものが該当します。

 

 

棚卸資産の評価方法を選択しよう

在庫(棚卸資産)を持つビジネスの場合、その評価方法を選択することができます。

評価を選択するためには、あらかじめ税務署へ「棚卸資産の評価方法の届出書」(詳細は節税対策に記載します)を3月15日までに提出する必要があります。この届出書を提出しないと、評価方法は「最終仕入原価法」で評価することになります。

 

 

具体的な棚卸資産の評価方法

青色申告者には、「低価法」の採用が認められています。

「低価法」とは、「原価法」で評価した金額と12月31日時点の時価を比較していずれか低いほうを棚卸資産の金額とすることができる方法です。従って、棚卸資産の評価を下げることができる(=売上原価を大きくすることができる)ため、「原価法」よりも必ず有利になります。青色申告者は「低価法」を採用することをおすすめいたします。

 

「原価法」には、6種類計算方法があります。上記の届け出を行わない場合は、「最終仕入原価法」で評価することになります。「最終仕入原価法」は、その年の一番最後に買ったものの値段で、12月31日時点のすべての棚卸資産を評価する方法です。そのため、1月に1個で1,000円で買ったものが、12月31日に値上がりして1個1,200円になった場合は年末に保有する期末棚卸資産の評価額はすべて、単価1,200円で計算されることになります。

 

 

販売費及び一般管理費(販管費)とは?

売上原価は、収入に直接ひもづけることができますが、例えば事務所で使う消耗品や電気代などは直接収入にひもづけることができません。そのため、年間に発生した金額で販売費及び一般管理費として、必要経費に含めることができます。販売費及び一般管理費には以下のような費用が含まれます。種類が多いため、すべてを紹介することはできませんが、仕事のために使った費用は原則必要経費になると覚えておけば十分です。

 

具体例

販管費の勘定科目名とどのような経費が分類されるのか具体的に見てみましょう。

勘定科目名内容
1.消耗品費事務用品や10万円未満の備品など
(10万円未満の備品とはデスク、本棚、パソコン等のオフィス周り用品です)
2.地代家賃仕事に使うオフィス、店舗、駐車場などの費用
3.水道光熱費電気、ガス、水道代など
4.旅費交通費移動するために使用した電車や新幹線、バス、タクシー代など
5.接待交際費取引先に対する接待、慶弔見舞、その他交際費など
6.通信費固定電話、携帯電話、インターネット、切手、はがき代など
7.給料賃金雇用している従業員に対する給与、アルバイト代などの人件費

実際には、どの勘定科目に分類すべきか迷うものが上記の表以外にもたくさんあります。その都度インターネットで「経費名+勘定科目」で検索すれば、ほとんどのものはわかります。

 

 

 

必要経費の計上時期

収入と同様に、経費も計上する時期について注意が必要です。

実際にお金を支払ったタイミングではなく、その年に支払うべき債務が確定したときに必要経費を計上します。支払うべき債務が確定する時期は以下の要件を満たしたときになります。

1.その年に債務が成立していること
2.物を受け取ったり、サービスをすでに受けていること
3.その年に金額が合理的に算出できること

 

債務が成立

債務が成立するとは契約がなされていることをいいます。「この商品をください」と注文して、「わかりました、送ります」と承諾されれば契約が成立し、商品を買う人に債務が成立します。契約は書面になっていなくても、口頭の電話やメールでも成立します。

 

 

物やサービス提供済み

「この商品をください」と注文をして、実際に物が手元に届いている必要があります。通販サイトで物を注文して、発送されたとしても物が届いていない場合は該当しません。

 

 

金額がわかる

金額がいくらかわからない場合、債務は確定しません。実際には、あまりないかもしれませんが、どうしてもその商品やサービスが必要で、金額の取り決めを後回しにしたような場合、金額が未確定となることもあります。