#4 会計のルール

%e4%bc%9a%e8%a8%88%e3%81%ae%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%83%ab

会計のルールは、会計原則と呼ばれています。法律ではないのですが、会計原則に従っていない貸借対照表、損益計算書、その他帳簿類は一般に公正妥当なものと認められません。

会計原則は様々ありますが、個人事業主が特に意識しておくべき会計原則に絞って解説します。

一般原則

一般原則は、全部で7つあります。(①真実性の原則、②正規の簿記の原則、③資本利益の区分の原則、④明瞭性の原則、⑤継続性の原則、⑥保守主義の原則、⑦単一性の原則)

 

もともと、企業向けに作られた原則のため、個人事業主にはあまり関係のないものも含まれています。個人事業主であれば、①、②、④、⑤を覚えておけば十分でしょう。いずれも難しくありません。

 

 

①真実性の原則について

言葉の通り、真実に基づいて報告してくださいということです。

 

 

②正規の簿記の原則について

帳簿記帳は、もれなく網羅的に、後日検証可能な証憑に基づいて、秩序だてて行ってくださいというものです。正規の簿記は、複式簿記を採用すれば問題ありません。

 

 

④明瞭性の原則について

明瞭に表示して、見る人に誤解を与えないでくださいというものです。

個人事業主の場合、税務署、取引先、金融機関に決算書を見せる機会があり得ます。一般に使用されない勘定科目を使用してしまうと見る人に伝わらない可能性もあります。

勘定科目の使い方に気をつければ問題ありません。

 

 

⑤継続性の原則について

一度、会計の方法(会計方針といいます)を決めたら、みだりに会計方針を変更せずに、毎期同じ方法を採用してくださいというものです。

 

例えば、去年と同じ取引を今年もしていたとします。会計方針を変えると、同じ取引なのに去年とは異なった決算書となってしまい、比較が困難になったり、決算書の操作が可能となってしまいます。このようなことを防止するために、会計は継続して行うことを原則としています。

 

ただし、正当な理由があれば、一度採用した会計方針も変更することができます。

 

 

 

 

損益計算書原則

損益計算書原則も複数ありますが、個人事業主の場合、発生主義の原則費用収益対応の原則の2つだけ覚えておけば十分です。

 

 

発生主義の原則について

発生主義の対義語である現金主義から説明をしたほうが分かりやすいため、現金主義、発生主義の順番で説明します。

 

 

現金主義とは、現金を貰った時に収入を計上し、現金を払った時に経費を計上する方法です。家計簿が分かりやすい例です。

 

 

発生主義とは、現金を貰う事実が確定したときに収入を計上し、現金を払う事実が確定したときに経費を計上する方法です。

 

 

例えば、12月に買い主へ物を引き渡し、その支払いを1月にしてもらう契約をしたとします。発生主義の場合、12月に現金を貰う事実(物の引き渡し)が発生しているため、12月に収入を計上します。(現金主義の場合は1月に入金されたときに収入を計上)

 

 

発生主義を採用することで使用する勘定科目

発生主義に基づいて帳簿記帳をする場合、未収収益、前受収益、未払費用、前払費用、減価償却費、各種の引当金などの勘定科目を使用することになります。

 

未収収益、前受収益について

未収収益は、例えば、物やサービスを顧客に継続的に提供し、お金をまだ貰っていない(貰える事実は確定している)ときに計上します。(複式簿記だと[未収収益○○円/収入○○円]と表現されます)

 

前受収益は、例えば、物やサービスの提供を継続的にする約束をして、お金を受け取った(物やサービスの提供はまだしていない)ときに計上します。(複式簿記だと[現金○○円/前受収益○○円]と表現されます)

 

 

未払費用、前払費用について

未払費用は、例えば、物やサービスの提供を継続的に受け、お金をまだ払っていない(払う事実は確定している)ときに計上します。(複式簿記だと[経費○○円/未払費用○○円]と表現されます)

 

前払費用は、例えば、物やサービスの提供を継続的にしてもらう約束をして、お金を支払った(物やサービスの提供はまだされていない)ときに計上します。(複式簿記だと[前払費用○○円/現金収益○○円]と表現されます)

 

 

減価償却費について

減価償却とは、例えば、長期間にわたって使える資産を購入したときに、その年に全額経費とするのではなく、複数期間にわたって経費にする会計方法です。

 

個人事業主の場合、青色申告者であれば30万円未満(白色申告者は10万円未満)の資産は、全額その年の経費にできますが、30万円以上の場合は資産に計上し、決められた方法で減価償却を行い、その年ごとに費用(経費)を計算する必要があります。(会計ソフトがあれば自動で計算できます)

 

 

 

各種の引当金について

引当金とは、将来発生する可能性のある事実を、現時点で推定し経費とする特殊な勘定科目です。

 

例えば、貸倒引当金等があります。貸倒引当金とは、掛け売りを行ったり、資金を貸し付けた時などに、貸し倒れる分を見積もってあらかじめ経費としてしまうときに使用する勘定科目です。節税対策に使用できる科目のため、そちらも参照してください。

 

 

 

費用収益対応の原則について

費用収益対応の原則とは、収益(収入)を獲得することに貢献した費用(経費)だけを選んで対応させなさいという決まりのことです。

 

例えば、1本300円のバナナを1万本売って300万円の収入があったとします。バナナは1本200円で仕入れていたとすると、経費に計上できるバナナの金額は200万円(200円×1万本)です。

 

仮に、バナナを3万本仕入れて、2万本販売したとします。この場合、収入は600万円(2万本×300円)、経費は400万円(2万本×200円)となります。収入に経費を個別に対応させることができる関係にあるといえます。

 

一方で、収入に経費を個別に対応させることができないものもあります。例えば、バナナを売るために店舗を年間120万円で借りていたとします。バナナをひとつ売るために、120万円の家賃のうち、いくらが収入を獲得するために貢献した費用なのかはわかりません。

 

このような場合は、期間で対応させます。年間のバナナ販売収入に対応する分の年間店舗家賃を経費に計上することができます。