10種の所得の中でも、なじみの深い給与所得ですが、改めて確認してみましょう。パートやアルバイトをするときに注意すべき、103万円の壁、130万円の壁、そして新設される106万円の壁についても解説しています。
給与所得とは?
給与所得とは、役員、従業員、パートおよびアルバイト等が勤務先から受け取る給料や賞与のことです。勤務先からお金を貰えば、原則、給与所得となりますが、交通費などは給与には含まれません。
給与所得の計算方法
給与所得は、収入金額から給与所得控除額を差し引いて計算します。
給与所得 = 収入金額 - 給与所得控除額
一般的にいう「年収」とは、収入金額(総支給額であり、毎月の給与に賞与を含めた金額)を指します。
収入金額に含めるべきもの
毎月の給料、残業代や賞与の他に交通費等が、勤務先から支給されることがあります。そのうち収入金額に含めるべきものは次の通りです。
項目 判定
通勤手当 通勤のために支給される手当は月10万円まで非課税です。(10万円を超えると給与とされます)
宿泊日当、宿直料、日直料 社会通念上相当と認められる金額であれば非課税です。(あまりに高いと給与とされます)
社宅、寮費 使用人から一定額以上の家賃を受け取っていれば非課税です。(一定額未満の場合、給与とされます)
家族手当、住宅手当等 給与として課税されます
そのほか、商品の大幅な値引き販売や、無償の土地建物の借り受け、豪華な食事の提供などの経済的利益の供与は、給与とみなされます。
給与所得控除額
個人事業主であれば、収入から必要経費を差し引くことができますが、給与所得者は収入から必要経費を差し引くことはできません。しかし、会社員でも給与をもらうために鞄、スーツ等をそろえる必要があり経費がかかります。そこで、給与所得者には、必要経費を概算で一律に計算する給与所得控除が認められています。
給与所得控除額は収入金額に応じて、以下の計算式で求めることができます。
収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額 × 40%(65万円未満の場合は収入金額)
180万円超~360万円以下 収入金額 × 30% + 18万円
360万円超~660万円以下 収入金額 × 20% + 54万円
660万円超~1,000円以下 収入金額 × 10% + 120万円
1,000万円超~1,200万円以下 収入金額 × 5% + 170万円
1,200万円超 230万円
特定支出控除の特例
給与所得者は、収入金額から給与所得控除額しか差し引くことができないのが原則ですが、多額の支出をした場合には収入金額から控除することが認められています。転居やその他勤務に必要な経費で、支出金額の合計が給与所得控除額の2分の1を超える場合に適用されます。使う機会は少ないと思いますが、該当しそうな場合は国税庁ホームページで詳細を確認してみてください。
103万円、106万円、130万円の壁とは?
アルバイトやパートなどで、よく103万円、130万円を超えない範囲でやったほうが得だと耳にしたことがあるかもしれません。学生アルバイトの方や主婦のパートの方はこの金額を意識しておかないと、思わぬ出費になりかねませんので注意が必要です。103万円の壁と130万円の壁がそれぞれどんなものなのか少し詳しく解説します。
103万円の壁
上記、給与所得控除額の表を改めて確認すると、65万円までは全額給与所得控除される(=税金0円)ことがわかります。この65万円に加えて、納税者一人一人に基礎控除38万円があります。そのためアルバイト・パート収入が103万円の場合、収入103万円―65万円(給与所得控除)-38万円=0円となり、税金がかかりません。(なお、100万円を超えると住民税がかかってきます)
103万円を超えるとアルバイト・パートをしている本人に103万円を超える部分に税金がかかってきます。(おおよそ10%程度です)また、主婦であれば給与が103万円を超えると、ご主人は配偶者控除を使えません(141万円までは配偶者特別控除の対象)ので税金が増えます。学生で扶養家族になっている場合も、扶養控除から外れますのでやはり税金が増えます。
130万円の壁
主婦のパートの方で、ご主人が社会保険に加入している会社員の場合、130万円の壁が問題となります。社会保険に被扶養者として加入できるため、主婦は健康保険や国民年金を支払う必要がありませんが、130万円を超えると、社会保険の扶養から外れてしまうため、国民健康保険料や国民年金を支払う必要があります。この負担が大きく、130万円の壁は103万円の壁よりも重要です。
106万円の壁(2016年10月より)
なお、2016年10月より社会保険適用範囲が拡大され、大企業(従業員501人以上)で働く一部のパートは、社会保険への加入が必要となる。要件は5つ(下記①~⑤参照)あり、そのうちのひとつが年収106万円となっています。その他の要件についても、容易に満たしてしまうハードルの低いものになっているため、注意が必要です。
要件① 週20時間以上 要件② 月額賃金8.8万円以上(年間106万円以上) 要件③ 勤務期間1年以上見込み 要件④ 学生は適用除外 要件⑤ 従業員501人以上の企業 |
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