個人事業主が納める必要がある税金は所得税、住民税、事業税、消費税です。このページではそのうち、消費税について解説します。
身近な税金のひとつである消費税ですが、要件を充たすと納税義務が生じます。納税義務の判定と納税額の算定、そして有利判定と届け出が、個人事業主の検討すべき消費税のポイントになります。納税義務の判定では1,000万円が基準になるため、覚えておくとよいと思います。
消費税のあらましと性格
あらまし
消費税は、財政再建を目的に1989年4月に税率3%で導入されました。その後1997年4月に5%、2014年4月に8%に増税され、今後10%まで増税されることが予定されています。
性格
消費税は、間接税という性格を持っています。
間接税とは、納税義務者(税金を納める人)と担税者(税金を負担する人)が異なる税金のことをいいます。
例えば、コンビニで100円のおにぎりを買ったときに、消費税8円を含めた108円をコンビニに支払います。おにぎりを買った人が担税者、コンビニが納税義務者になります。
対義語として、直接税があります。直接税は担税者と納税義務者が一致しています。所得税などが直接税の典型例です。
納税義務の判定
消費税の納税義務は、すべての個人事業主にあるわけではありません。以下の要件に該当するとき、はじめて消費税の納税義務が生じます。
- 2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合
- 事業1年目の上半期(1月1日から6月30日まで)売上が1,000万円を超える場合(2年目から消費税を納める必要があります。ただし、上半期の人件費が1,000万円を超えなければ2年目も免税になります。そのため、事業1年目の上半期で売上が1,000万円を超える見込みの場合は、慎重に役員報酬等の人件費を調整することが重要です)
納税額の算定
(1)通常の消費税計算
納付税額 = 売上に関する消費税 - 仕入に関する消費税
仕入に関する消費税は、課税売上割合(*1)が95%以上の場合全額控除が可能です。
課税売上高が5億円を超える場合、個別対応方式あるいは、一括比例配分方式(*2)いずれかの方法により仕入控除税額の計算を行います。
パターン1: 5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上
パターン2: 課税売上高が5億円超、又は、課税売上割合が95%未満
*1)
課税売上割合は、課税期間中の課税売上高(税抜き)を課税期間中の総売上高(税抜き)でわることで算出します。
*2)
一括比例配分方式を選択した場合、原則として2事業年度の間は変更することができません。
(2)個別対応方式と一括比例配分方式
≪個別対応方式≫
仕入れに係る消費税額を次の①~③に分類します。(分類できない場合、次の≪一括比例配分方式≫を適用する)
① 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
② 非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
③ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの
分類ができたら次の算定式に当てはめて仕入控除税額を算出します。
仕入控除税額 = ① + ( ③ × 課税売上割合 )
なお、この個別対応方式は、①~③の区分分けがされている場合に限り、採用できます。
≪一括比例配分方式≫
仕入れに係る消費税額が≪個別対応方式≫の①~③のように区分されていない場合に適用します。あるいは、①~③のように区分されていても、この方式で計算したほうが、納める税金が安くなる場合に適用することができます。(注意:一括比例配分方式を選択した場合、2年間以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更不可)
次の算定式に当てはめて仕入控除税額を算出します。
仕入控除税額 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合
(3)簡易課税の消費税計算
納付税額 = 売上に関する消費税 - 売上に関する消費税 × みなし仕入率
簡易課税を選択すると、仕入に関する消費税と関係なく、売上に関する消費税によって、納付税額が算定されます。
通常の消費税計算と簡易課税の消費税計算では、納付税額に大きな差が出る場合があります。消費税の納税義務が生じる時は慎重な判断(シミュレーションを行う、税理士に相談する等)が必要です。
なお、簡易課税を選択する場合、事業年度の開始の日の前日までに、税務署に対して届け出をする必要があります。
(4)みなし仕入率(簡易課税)
簡易課税の消費税計算に用いるみなし仕入率は、以下のように定められています。
区分 | 業種 | みなし仕入率 |
---|---|---|
第1種事業 | 卸売業 | 90% |
第2種事業 | 小売業 | 80% |
第3種事業 | 製造業等 | 70% |
第4種事業 | 飲食店業1,2,3,5以外の事業 | 60% |
第5種事業 | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業 | 50% |
第6種事業 | 不動産業 | 40% |
(注) 平成27年4月1日以後に開始する課税期間については
①金融業及び保険業を第6種事業とし、みなし仕入率を現行60%を50%
②不動産業を第6種事業(新設)とし、みなし仕入率を現行50%を40%
として適用します。
必要な届け出書類
主な消費税に関する必要届け出書類は以下の通りです。
届出書の名称 | どのようなときに? | 届け出時期 |
---|---|---|
消費税課税事業者届出書(基準期間用) | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたとき | 事由が生じた場合、速やかに提出 |
消費税課税事業者届出書(特定期間用) | 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えたとき | 事由が生じた場合、速やかに提出 |
消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下になったとき | 事由が生じた場合、速やかに提出 |
消費税簡易課税制度選択届出書 | 簡易課税を選択するとき | 簡易課税を選択しようとする期間の前日までに |
消費税簡易課税制度選択不適用届出書 | 簡易課税の選択をやめるとき | 簡易課税をやめようとする期間の前日までに |
消費税課税事業者選択届出書 | 免税事業者が課税事業者を選択するとき | 課税事業者となる期間の前日までに |
消費税課税事業者選択不適用届出書 | 課税事業者が免税事業者を選択するとき | 免税事業者となる期間の前日までに |