#1 確定申告ってなんだ?

#1 確定申告ってなんだ?

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算して”確定“させ、所得から税金を計算し、税務署に”申告“することです。(所得とは、収入から必要経費を差し引いた”もうけ”のことです)順番にわかりやすく確定申告について説明します。知っているところは読み飛ばしてください。

確定申告のルール

計算期間は決まっている!

point! 計算期間が決まっていて、これを変更することができない

 

会社だと確定申告の計算期間を自由に設定できますが、個人だと計算期間を変更することはできません。

 

つまり、今年多額に所得が出る見込みだとわかっても、計算期間を1年より短くして翌年の所得とするような節税方法は使えないということです。

 

そのため、年末にあわてて節税対策を行うのではなく、年間を通じて常に節税を考えておく必要があります。

 

 

計算と申告は自分で!

point! 計算と申告は自分(あるいは資格のある税理士等)でしなくてはならない

 

所得は収入から必要経費を差し引いて計算します。何が収入になるのか、どんな収入(個人の場合、所得は10種類に分類されます)になるのかを判断する必要があります。

 

また、必要経費についても、何を含めてはいけないのかを判断する必要があります。そうした判断の結果、計算された所得から納めるべき税金を計算します。

 

難しく聞こえるかもしれませんが、自分が迷うものは他人も迷うもの。書籍、インターネット、会計ソフトのアドバイス機能を用いれば、一人でも十分に解決することが可能です。

 

 

確定申告って個人事業主だけじゃないの?

給与所得者(いわゆる会社員、サラリーマン)は年末になると、会社が年末調整を行ってくれるため、確定申告をする必要がない方がほとんどです。会社は1月から12月までの給与と必要な控除を行って所得を計算し、給与から天引きして税務署に申告・納税しています。

 

ほとんどの給与所得者は、確定申告をすることはありませんが、会社からの給与以外に収入がある方、2箇所以上から給与収入がある方、住宅ローン控除を行う必要がある方などは、自分で確定申告を行う必要があります。詳細は#2 確定申告は誰が?に記載しますので、参照してください。

 

 

毎年、少しずつ税金のルールは変わっています。

なんで税金のルールは変わるのか?

毎年、年末になると、翌年の税金ルールが「税制改正大綱」として与党から公表されます。

 

世の中の流れをよんで、時代に合った税金ルールとなるように毎年改正が行われています。例えば、法人税率の引き下げは、日本への海外企業誘致や競争力のある市場形成を目的としています。

 

結婚・子育て資金の贈与非課税は、少子高齢化対策や高齢者から若年者への財産の移転を目的としているものです。

 

そのため、一度税金ルールを覚えても、翌年には改正されたり、新しいルールが定められたりと、なかなか最新の税制情報をキャッチアップすることが難しいのです。

 

当サイトでも、税制改正の内容をまとめていますのでご参照ください。

 

 

会計ソフトを利用してキャッチアップ!

世の中の会計ソフトは、毎年の税制改正を織り込んで作成されています。そのため、クラウド型の会計システムはアクセスすれば、常に最新の税制に対応した帳簿や確定申告書の作成が可能になっています。

 

また、インストール型の会計ソフトは最新版を買えば、その時の税制に対応したものを使用することができます。会計ソフトの比較をご参照ください。

 

安いからと言って、バージョンの古いインストール型の会計ソフトを使ってしまうと、適切な帳簿や確定申告書を作成できない可能性があるため、留意が必要です。

 

 

確定申告してない人もいるみたいですが?

節税と脱税は違います

確定申告をしないまま何年も営業している個人事業主をたまにみかけます。税務調査は基本的に所得を申告している人に対して行われるため、確定申告しないことが節税だと聞くこともありますが、脱税であり犯罪です。

 

 

脱税はどうやって発覚する?

様々な経路で、税務署に個人事業主が確定申告をしていないことが発覚する可能性があります。

 

例えば、雇っていた従業員と喧嘩し、従業員が退職してしまった場合、税務署に無申告であることを通告する可能性があります。

 

また、得意先や仕入先に税務調査が入った場合、台帳に記載された名前から発覚する可能性があります。

 

そして、新たに導入されたマイナンバーは、容易に取引関係や個人の納税記録を照合することができるため、今後ますます無申告でいることは難しくなっていきます。

 

下記に記載の通り、無申告のペナルティーは重いため、確定申告をしないメリットはありません。

 

 

確定申告しないとどうなるの?

罰金的に加算税が課せられます。加算税は以下の4通りとなっています。

 

1.過少申告加算税

確定申告期限内(3月15日まで)に確定申告を行ったものの、過少に申告してしまった場合、税務署が税金の額を調査して「更正」することがあります。

この場合、追加で納付する税金の10%が過少申告加算税として課されます。(なお、追加で納付する税金が50万円を超えると、その部分については15%が適用されます)

 

 

2.無申告加算税

確定申告期限内(3月15日まで)に確定申告を行わなかった場合、税務署が税金の額を調査して「決定」することがあります。

「決定」を受けると、本来納めるべき税金に加えて、50万円までは本来納めるべき税金×15%、50万円を超える部分については本来納めるべき税金×20%が無申告加算税として課されます。

自主的に申告を行った場合、本来納めるべき税金×5%が課されます。

 

 

3.不納付加算税

源泉所得税が期限内に納められなかった場合、納めるべき税金の10%が不納付加算税として課されます。

自主的に申告を行った場合、本来納めるべき税金×5%が課されます。

 

 

4.重加算税

上記1~3の過少申告、無申告、不納付の場合で事実を仮装、隠蔽などした場合に1~3に代えて課されます。

過少申告加算税に代える場合、適用される税率は35%です。

無申告加算税に代える場合、適用される税率は40%です。

不納付加算税に代える場合、適用される税率は35%です。

 

 

脱税犯や故意の申告書不提出によるほ脱犯は、懲役(~10年)や罰金(~1,000万円)があります。

#2 確定申告は誰が?

#2 確定申告は誰が?

すべての人が確定申告をしなければならないわけではありません。

給与所得者(いわゆる会社員、サラリーマン)の方は、毎月の給料から所得税が源泉徴収され、年末調整を会社が行ってくれるので、事情(住宅ローン控除を受ける、他に所得がある等)がない限り、確定申告は不要です。

誰が確定申告をする必要があるの?

 

 

所得税の申告義務がある方

以下に当てはまる方は確定申告が必要です。

1.個人事業主を含め、10種類の所得合計が基礎控除(38万円)を超える方

2.住宅ローン控除等を受けて税金の還付をする方

3.上場株式等の譲渡損失と配当との損益通算を行う方、または、損失の繰り越しを行う方(翌年以後3年間繰越が可能です)

4.公的年金等の収入が400万円超の方(400万円以下でも、他の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です)

5.給与所得者のうち、以下に該当する方
・給与が年間2,000万円を超える方
・給与以外の所得が20万円を超える方
・2か所以上から給与をもらっている方
・同族会社から給与以外に利子や賃貸料をもらっている方

*同族会社とは?

株主の3人以下と株主と特殊の関係のある個人及び法人(配偶者や支配下にある会社)の議決権保有合計が50%超の会社(詳細は国税庁HPをご参照)

 

 

 

消費税等の申告義務がある方

以下に当てはまる方は確定申告が必要です。

 

1.2年前の課税売上高が1,000万円を超える事業主

2.2年前の課税売上高が1,000万円以下で、前年に「消費税課税事業者選択届出書」を提出している事業主

3.前年の前半(1月1日から6月30日)の課税売上高が1,000万円を超えている事業主

 

 

贈与税の申告義務がある方

以下に当てはまる方は確定申告が必要です。

 

1.110万円を超える財産の贈与を受けた方

2.財産の贈与を受けた方で、配偶者控除の特例を適用する方

3.財産の贈与を受けた方で、相続時精算課税を適用する方

4.財産の贈与を受けた方で、住宅取得等資金の非課税を適用する方

 

 

本人以外でも確定申告書の提出ができます

税理士に依頼する

確定申告は原則本人が行うか、代理人として税理士に依頼する必要があります。

 

有償・無償を問わず本人以外に確定申告書を作成することができるのは税理士だけです。税理士には税務相談、税務代理、税務書類作成の独占権限があたえられています。

 

そのため、税理士あるいは税理士法人以外に代理を依頼してしまうと、法律違反となるため、注意が必要です。

 

 

配偶者、親族に依頼する

確定申告書を本人が作成し、税務署へ届けるだけであれば、配偶者や親族でも問題ありません。これは税理士業務である税務代理にあたらないと考えられているためです。

 

また、配偶者の方が税務署にレシートや計算書などの必要書類を持ち込んで、確定申告書を作成することもよくあります。

 

原則は本人が確定申告書を作成する必要がありますが、配偶者が作成することは、本人の意思に基づいた委任であることが明らかであるため認められています。

 

 

電子申告する

税務署へ確定申告書を持ち込む以外にもe-Taxを用いた電子申告の方法があり、便利ですので参照してください。

 

 

税理士に頼むといくらするの?

多くの個人事業主や給与所得者は、自分で確定申告を行っています。税務署にいけば職員の方が丁寧に記載方法を教えてくれますし、地域の税理士会も無料で相談を受け付けているため、税務や会計ソフトの知識がなくても確定申告は問題なく行うことができます。

 

一方で、税理士に依頼される方もいます。事業所得に複雑な計算が発生する場合や、節税手法をよく知らない場合、プロにお金を払って頼んだほうが、結果として得をする場合もあります。

 

 

税理士のサービス内容

税理士と契約する場合、節税や記帳の指導をメインとする顧問報酬(毎月発生)と、決算申告料(年1回発生)に大別されます。

 

記帳は自分でやるので申告だけ依頼したい場合は年1回の決算申告料だけで済みます。一方で、毎月の記帳から相談が多い場合は顧問契約を結びます。

 

税理士報酬はサービス、年商、従業員数等に応じて変わります。以下の表は直近の税理士実態調査からの報酬統計です。

サービス内容1位2位3位
顧問報酬1万円以下
(35%)
3万円以下
(51%)
5万円以下
(10%)
決算申告料5万円以下
(50%)
10万円以下
(30%)
20万円以下
(15%)

決算申告だけを税理士に頼む場合、複雑でなければ、おおよそ5万円程度です。

 

毎月の記帳や節税相談をしたい場合、顧問契約はおおよそ年間12万円(1万円×12か月)です。

 

合計で17万円で一通りの税理士サービスを受けることができます。つまり、17万円以上のメリットがあれば、税理士に顧問と決算申告を依頼したほうが良いということになります。

 

 

事前確認を!

税理士に依頼するとき、料金については入念に確認する必要があります。

 

例えば、消費税を納める必要がある事業主の場合、別途決算申告料がかかる場合があります。また、給与計算を依頼した場合、年末調整をした場合、記帳の代行を依頼した場合、それぞれでオプション料金がかかる場合があります。

 

顧問業務と決算申告業務に、どこまでサービスが含まれているのか確認せずに契約してしまうと、思っていた以上に費用がかかることがありますので、留意する必要があります。

 

#3 確定申告はいつ?どうやって?

#3 確定申告はいつ?どうやって?

確定申告をする時期と方法は決まっています。ビジーシーズンは、税務署で申告方法を教えてもらうために、何時間も待たされてしまうことも多いです。申告時期になって慌てないように、年を越さないうちに準備しましょう。節税対策も早めに行うほど効果を大きく出すことができます!

いつ確定申告すればいいの?

所得税等の申告時期

2016年1月1日から2016年12月31日までの確定申告期限は、3月15日(水)です。

 

消費税等の申告時期

2016年1月1日から2016年12月31日までの確定申告期限は、3月31日(金)です。

 

確定申告の注意点

確定申告を忘れてしまうと、場合によっては加算税を課されてしまうおそれがありますので、申告期限内に、確定申告書を提出できるように準備をしておくことが重要です。

 

確定申告期間に申告相談会が設けられますが、大変混雑しているため、疑問点があれば事前に税務署の「電話相談センター」税理士会の無料相談を利用することが効率的です。

 

また、12月31日を過ぎて、年が明けてしまうと、使用できる節税対策も限定されてしまいます。そのため、常に早め早めの手を打っておくことが、節税と確定申告では重要となっています。

 

 

どうやって確定申告すればいいの?

確定申告書の入手方法

確定申告をおこなうために、申告書を入手する必要がありますが、以下のような方法で入手するのが一般的です。

 

会計ソフトに組み込まれている確定申告書を利用します。

・「個人事業の開業届出書」を税務署に提出すると、1月くらいに確定申告書が送られてきます。(「個人事業の開業届出書」については、#4 青色申告その1を参照)

・国税庁ホームページ「確定申告特集」よりダウンロードすることができます。

・税務署、申告相談会場で受け取ることができます。

電子申告(e-Tax)を利用することができます。(手続きが必要なため、早めに準備する必要があります)

 

 

確定申告書の記載方法

会計ソフトを利用している場合、アシスト機能がついているため、確定申告書のどこに何を記載すればよいかほとんど迷わずに記載・作成することが可能です。

 

記載する必要のある確定申告書をまとめると以下の通りです。

使用できる方申告書A
第一表
第二表
申告書B
第一表
第二表
第三表第四表
給与所得、雑所得(公的年金等含む)、配当所得、一時所得のみで、予定納税額のない方
所得の種類にかかわらず、誰でも使用可能(事業所得、不動産所得、譲渡所得、利子所得がある方)
土地建物等、株式等、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の譲渡所得、申告分離課税の先物取引の雑所得等、山林所得や退職所得がある方
所得金額が赤字、あるいは所得金額から雑損控除額、繰越損失額を控除すると赤字になる方

※前年分から繰り越された損失額を本年分から差し引く場合、変動所得や臨時所得について平均課税を選択する場合、申告書Bを使用します。

 

少し用語が難しいですが、10種の所得詳解に所得分類と控除について、詳しく解説していますので参照してください。また、会計ソフトに確定申告書の記載方法をソフト別に詳しく解説していますので参照してください。

 

 

確定申告書の提出方法

具体的な提出方法

確定申告書は以下の方法で提出することができます。

 

・税務署に持参する

・税務署に郵送する

電子申告(e-Tax)する

・代理人(税理士等)に依頼する

持参あるいは郵送する場合、税務署には所轄がありますので、事前に自分の所轄税務署を国税庁ホームページで調べて、提出しましょう。

 

 

控えを入手しておく

確定申告書は控えを取っておきましょう。押印した確定申告の原本をコピーし、税務署に持参すると、コピーに収受受付印をもらうことができます。(複写式の確定申告書を使用した場合は、コピーをとる必要はありません)

 

郵送の場合は、自宅住所を記載した切手添付済みの封筒を一緒にいれておけば、収受受付印の押印がなされた確定申告書のコピーを送ってもらうことができます。

 

税理士や税理士法人に依頼する場合、成果物として確定申告のコピーが納品されますので、手続きは不要です。電子申告の場合は申告・納税方法に詳しく解説していますので参照してください。

 

 

控えが必要になる時

確定申告書のコピーは各種ローンや保育園の入園申請等に必要になる場合があります。

 

また、翌年の確定申告を行う場合、前年の確定申告書のコピーがあると、参照しながら作成できますので効率的です。忘れずに入手してください。

 

なお、確定申告書のコピーを紛失してしまっても、税務署に対して開示請求を行えば、発行することが可能です。

#4 青色申告、白色申告その1

#4 青色申告、白色申告その1

青色申告が有利なのはわかっているけど、難しいからずっと白色申告をしているという個人事業主の方は多いです。

「#4 青色申告、白色申告その1」では、青色申告のメリットと青色申告をするための事前準備について解説します。

#5 青色申告、白色申告その2」では、、青色申告者と白色申告者がしなくてはならないこと、そして青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件について、解説します。

青色申告のメリット

比較してみよう!

青色申告と白色申告を比較してみます。

項目名青色申告白色申告
青色事業専従者給与労務対価として相当と認められる金額であれば、給与は全額必要経費1人当たり50万円が限度
(配偶者の場合は86万円)
青色申告特別控除最大で65万円を所得から差し引くことができます
(要件に該当しない場合は10万円)
純損失の繰越控除、
繰戻還付
損失が発生した場合、3年間損失を繰越すことができます。あるいは前年の所得から還付をうけることができます
少額減価償却資産の
特例
取得価額30万円未満の減価償却資産を、全額その年の必要経費にすることができます
貸倒引当金の計上個別評価、一括評価(事業所得のみ)の貸倒引当金を計上できます個別評価の貸倒引当金を計上できます
棚卸資産の評価選択税務上有利な棚卸資産評価方法である低価法を採用できます

 

 

 

青色申告のメリット

やはり、青色申告の最大のメリットは65万円の所得控除を受けられる点です。

 

65万円の控除と10万円の控除の最大の違いは、帳簿の付け方にあります。65万円の控除を受けるためには複式簿記で記帳する必要があります。

 

白から青へに記載の通り、会計ソフトを用いれば複式簿記を理解する必要はありません。

 

その他にも65万円の特別控除を受ける要件がありますので、「#5 青色申告、白色申告その2」の≪青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件≫を参照してください。

 

 

 

シミュレーションすると・・・

所得が500万円の場合、青色申告と白色申告で所得税と住民税の額をシミュレーションしてみます。

所得500万円の場合青色申告白色申告
所得税約37万円約51万円
住民税約41万円約47万円
合計約78万円約98万円

所得500万円の場合、青色申告をすることで約20万円の節税になっています。

 

所得を20万円増やすために、収入をどれだけ増やす必要があるのかを検討してみてください。利益率が50%だとすると、収入を40万円増やさないと所得は20万円増えません。

 

収入を40万円増やす努力よりも、適切に会計ソフトを使って、青色申告で節税することも大切なことです。

 

 

 

青色申告特別控除以外にも

配偶者や従業員がいる場合、青色事業専従者給与が全額必要経費という点も見逃せません。所得税は累進課税(所得が増えるほど税率が高くなる)のため、可能な限り所得を分散することが大きな節税につながります。

 

例えば、一人で所得500万円の場合、所得税と住民税の合計は約78万円(上表参照)ですが、二人で所得250万円ずつ(合計500万円)の場合、所得税と住民税の二人分合計は約45万円です。所得を分散することで約33万円の節税です。

 

配偶者や親族に事業を手伝ってもらっている場合、青色事業専従者として届け出を行い、所得を分散すると自分を含めた身内にお金を残すことができます。

 

 

 

青色申告をするために

メリットの多い青色申告ですが、採用するためには、事前の届け出が必要です。下の≪青色申告の事前準備≫で詳細に解説します。

 

 

 

 

補足:白色申告のメリット

結論からいいますと、今は白色申告のメリットがほとんどありません。

 

平成26年(2014年)1月から事業所得不動産所得および山林所得のある方すべてに対して、記帳と帳簿の保存が義務付けられました。(所得税の申告の必要がない方も記帳と帳簿の保存が必要です)

 

それまでは、一部の方(事業所得等が300万円超)に、記帳と帳簿の保存義務がありました。そのため、記帳と帳簿の保存義務がないことが、最大のメリットであった白色申告は、現在ほとんどメリットがありません。

 

 

 

 

青色申告の事前準備

青色申告を新たに行う方(従来白色申告の方が青色申告に変える場合)、新規に開業した方でそれぞれ「青色申告承認申請書」を期限までに提出する必要があります。

・(原則)新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出。
・(新規開業)業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出

 

 

 

届け出をしよう!

新規に開業した方は同時に合わせて、「個人事業の開業届出書」を税務署に提出すると効率的です。「個人事業の開業届出書」の提出期限は、開業後1ヶ月以内です。また、青色事業専従者がいる場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」、を期限までに税務署に提出します。

・「青色事業専従者給与に関する届出書」の税務署提出期限はその年の3月15日まで。
・新規事業や新たな雇い入れは開始日から2か月以内。

 

 

 

受付印を忘れずに

「青色申告承認申請書」、「個人事業の開業届出書」、「青色事業専従者給与に関する届出書」は、それぞれ原本のコピー(白黒可)を取って、税務署に提出した際に収受受付印をもらうことを忘れないようにしてください。

 

「青色申告承認申請書」、「個人事業の開業届出書」、「青色事業専従者給与に関する届出書」が認められた場合でも、その通知がくることはありませんので、自分で控えを取って証拠として残しておくことが必要です。

 

税務署への提出は、持参でも郵送でも可能です。(郵送の際は自宅住所を記載した、切手添付済みの封筒をいれてください)

 

 

 

事業専従者給与は慎重に検討

青色事業専従者の給与については、慎重に検討する必要があります。給与の金額によっては、青色事業専従者とならないほうが得な場合もあるからです。詳細は節税対策を参照してください。

#5 青色申告、白色申告その2

#5 青色申告、白色申告その2

#4 青色申告、白色申告その1」では青色申告のメリットと青色申告をするための事前準備について、解説しました。

 

「#5 青色申告、白色申告その2」では、青色申告者がしなくてはならないこと、そして青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件について解説します。

青色申告をするために!

青色申告者がしなくてはならないこと

青色申告をするためには、「青色申告承認申請書」を提出していることが前提です。未提出の場合は、「#4 青色申告、白色申告その1」の≪青色申告の事前準備≫を参照してください。

 

そして、確定申告の際に「貸借対照表」と「損益計算書」を作成できるように、正規の簿記(複式簿記)の方法で記帳・保存することが原則です。なお、「貸借対照表」、「損益計算書」および複式簿記での記帳は、会計ソフトを用いれば特別の知識は不要です。

 

簡易な記帳(「現金出納帳」、「売掛帳」、「買掛帳」、「経費帳」、「固定資産台帳」のような帳簿を備え付けて)をするだけでもよいことになっています。

 

これらの帳簿及び書類などは、原則として7年間保存することとされていますが、書類によっては5年間でよいものもあります。以下の表を参照してください。

保存が必要な帳簿、書類名保存期間
「仕訳帳」、「総勘定元帳」、「現金出納帳」、「売掛帳」、「買掛帳」、「経費帳」、「固定資産台帳」など7年
「貸借対照表」、「損益計算書」、「棚卸表」などの決算関係書類7年
「領収証」、「小切手控」、「預金通帳」など現預金取引関係書類7年(※)
「請求書」、「見積書」、「契約書」、「納品書」、「送り状」など取引関係書類5年

(※)※前々年分所得が300万円以下の場合は5年です。

 

帳簿・書類の保存は紙で行うことが原則です。会計ソフトを使用して作成した帳簿・書類であっても、紙に出力する必要があります。

なお、一定の手続きと要件を満たすことで、紙ではなく電子データで保存することができます。

 

 

 

電子帳簿書類保存について

帳簿・書類を紙ではなく電子データで保存するためには、3か月前に税務署に申請し、承認を得る必要があります。

 

税務署から承認を得れば、帳簿だけではなく、領収書や請求書といった書類もスキャナで読み込み保存することが可能となります。電子データとして、保存した帳簿・書類の原本は廃棄することができます。

 

なお、電子データで保存するためには、会計記録(帳簿)の変更履歴を残す必要があります。会計ソフトを使い始める時に、電子帳簿書類方式を選択できますので、利用する際は選択してください。

 

最大で7年間、帳簿・書類を保存する必要がありますが、個人事業主の場合、紙で出力してもそれほど場所をとりません。電子データ保存は便利ですが、事前申請や要件が煩雑であり、使い勝手がそれほどよくないと感じている方が多いようです。

 

そのため、個人事業主は紙での保存がオススメです。電子データ保存にチャレンジされる方はこちらを参照してください。

 

 

補足:白色申告者がしなくてはならないこと

「#4 青色申告、白色申告その1」に記載の通り、白色申告の場合も、記帳と帳簿の保存が義務付けられました。 記帳は、一つ一つの取引ごとではなく、その日の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法(参照:国税庁ホームページ)で記載してもよいことになっています。帳簿・書類の保存期間は以下の通りです。

保存が必要な帳簿、書類名保存期間
収入金額、必要経費を記載した帳簿7年
業務に関して作成した収入金額、必要経費以外の帳簿5年
決算に関して作成した棚卸表等の書類5年
業務に関する請求書、納品書、送り状、領収書等の書類5年

青色申告の場合と同様に、帳簿・書類の保存は紙で行うことが原則です。会計ソフトを使用して作成した帳簿・書類であっても、紙に出力する必要があります。

 

 

青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件

65万円の青色申告特別控除をうけるためには、以下の5つの要件をクリアする必要があります。

① 期限内に確定申告書を提出すること
② 複式簿記で記帳していること
③ 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添えて提出すること
④ 事業所得あるいは事業的規模の不動産所得であること
⑤ 発生主義を採用していること

①期限内の申告について

確定申告期限に間に合うよう日々記帳し、疑問点は早めに税務署や税理士会に質問することで、十分に期限内申告することができます。

 

②複式簿記について

会計ソフトを利用すれば、複式簿記を理解する必要はありません。会計ソフトが自動的に複式簿記での記帳をサポートしてくれます。

 

③貸借対照表と損益計算書について

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)と損益計算書(そんえきけいさんしょ)は、会計ソフトを用いて記帳していれば、会計ソフトのボタンを押すだけで出力することができます。

 

④所得の種類について

事業所得であれば問題ありません。事業的規模の不動産所得とは、アパートであれば10室以上の貸し付け、貸家であれば5棟以上の貸し付けによる所得をいいます。

 

⑤発生主義について

発生主義とは、会計の考え方のひとつです。対義語として、現金主義があります。現行制度では、発生主義がより精緻な会計方法とされています。

それほど難しくなく、税理士に頼らなくとも十分に対応可能です。発生主義による記帳方法については、記帳方法を参照してください。