譲渡所得その2では、土地建物等を譲渡した際の所得計算について記載しています。
土地建物等を譲渡すると総合課税ではなく、原則として分離課税となります。保有期間に応じて税率が異なりますので、留意が必要です。
譲渡所得その1では、総合課税される譲渡所得について記載しています。
譲渡所得その3では、分離課税される株式等の譲渡所得について記載しています。
保有期間の判断について
土地建物等を譲渡した場合は、譲渡した年の1月1日時点で譲渡した資産を5年間超保有していたか(以下、分離長期と記載)、5年間以下の保有期間(以下、分離短期と記載)かで税率が異なります。
事業所得又は雑所得に分類される土地建物等の譲渡について
取引の分類
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所得区分 |
不動産販売を生業とする者が、販売するために保有する土地建物の譲渡
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事業所得又は雑所得 |
・金融業者が担保権実行により土地建物を取得し、その土地建物を譲渡
・金融業者が代物弁済により土地建物を取得し、その土地建物を譲渡
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事業所得 |
土地建物等でなくても、土地建物等の譲渡に分類される取引について
- 株式等の譲渡でも分離短期として課税される取引
ア 譲渡された株式等の発行会社の総資産価額の70%以上が譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下の土地等である場合のその株式等の譲渡
イ 譲渡された株式等が譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもので、かつ、その発行法人の総資産価額の70%以上が土地等である場合のその株式等の譲渡
・譲渡をした年以前3年以内のある時点において、その法人の株式又は出資の30%以上がその法人の特殊関係株主等によって所有されていたこと
・その法人の株式又は出資を譲渡した人がその法人の特殊関係株主等であること
・その年においてその法人の特殊関係株主等の譲渡した株式又は出資がその法人の株式又は出資の5%以上に相当し、かつ、その譲渡をした年以前3年内の譲渡と合わせると15%以上に相当すること
- 借地権又は地役権の設定の対価としての権利金等で一定額以上のものは、不動産所得ではなく土地建物等の譲渡とされます
権利の種類 | どのようなときに該当するのか |
借地権の設定 | 権利金の額が土地価額の10分の5超である場合(ただし、地代の年額の20倍以下の場合を除く) |
地役権の設定、特別高圧架空電線の架設、又は高圧ガス管の敷設等 | 権利金の額が土地価額の4分の1超である場合
(地代の年額の20倍以下の場合を除く) |
土地建物等の譲渡所得の計算方法
土地建物等の譲渡所得は、収入金額から取得費及び譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額を差し引いて計算します。
土地建物等の譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 |
収入金額について
・固定資産税の未経過期間に対応する清算金がある場合は、精算金を加算した金額を収入金額とする必要があります。
・土地建物等の譲渡代価として、お金以外(権利等)で受け取った場合、時価で収入金額を計上します
取得費について
建物等の減価償却資産を売却した場合は、1月1日から売却時までの減価償却費を計上することができます。
土地建物等を取得する際に支払っている登録免許税、登記費用、不動産取得税、印紙税を取得費に計上することができます。
土地を造成する際に支払った費用、土地建物を取得し、1年以内に建物を取り壊すために支払った費用は取得費に計上することができます。
所有権確認の訴訟や違約金を支払っている場合、取得費に計上することができます。
譲渡費用について
該当する費用 | 該当しない費用 |
① 仲介手数料、収入印紙代
② 測量費、分泌・所有権移転登記費用 ③ 前契約の解約違約金 ④ 譲渡のための家屋等の取り壊し費用及び取り壊しされた家屋等の損失額(未償却残高) ⑤ 立退き料 ⑥ 借地権譲渡時に支払った名義変更料
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① 譲渡資産に係る固定資産税
② 譲渡資産の遺産分割に関する弁護士費用 ③ 相続登記費用(なお、取得費に該当) ④ 事故の引っ越し費用 ⑤ 家屋等の修繕費 ⑥ 住所変更登記費用 ⑦ 抵当権抹消費用 ⑧ 税理士報酬 ⑨ 税金に関する相談費用 ⑩ 申告書作成費用 |
特別控除額について
区分 | 特別控除額 |
収容交換等により資産を譲渡した場合の特別控除 | 5,000万円 |
居住用財産を譲渡した場合の特別控除 | 3,000万円 |
特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除 | 1,500万円 |
農地保有の合理化等のために土地等を譲渡した場合の特別控除 | 800万円 |