#11 退職所得

#11 退職所得

退職所得とは、勤務先から一時に受けとった退職金等の所得をいいます。社会保険制度などの一時金、確定拠出年金の一時金、中小企業退職金共済の一時金などが該当します。年金形式ではなく一時金として、まとまった金額で退職金を受け取った場合に退職所得に該当します。退職所得は、退職後の生活資金としての意味合いがつよいため、税制上も優遇されています。

退職所得の計算方法

退職所得は、収入金額から退職所得控除を差し引いた金額の2分の1です。

退職所得 = (収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2

通常は勤務先が、「退職所得の受給に関する申告書」を準備し、退職者が会社に提出することで、勤務先が所得税額を計算して源泉徴収するため、確定申告は必要ありません。
手違いで、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を行わなかったとしても、退職手当等から20.42%が源泉徴収されますが、退職者が確定申告を行うことにより納めすぎた税金の還付を受けることができます。

 

 

特定役員退職手当等について

なお、特定役員退職手当等に該当してしまうと、退職所得の最大のメリットである2分の1の恩恵がありません。

特定役員等の退職所得 = 収入金額 - 退職所得控除額

特定役員退職手当等とは、勤続年数が5年未満の役員等(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事などの法人の経営に従事している人や公務員等)が受け取る退職金のことです。

この制度は、在職期間中に給与を低く抑える代わりに、高額な退職金を受領して税金逃れをする事例があったためもうけられた制度のようです。そのような意図はなくとも、該当してしまうと2分の1課税から外れ税金が大きくなってしまうため注意が必要です。

 

 

退職所得控除額

退職所得控除額は、勤務年数(1年未満の端数は切上げ)に応じて下の表の計算方法で算出します。

勤続年数退職所得控除額
20年以下勤続年数 × 40万円
(80万円未満の場合は80万円)
20年超(勤続年数 - 20年) × 70万円 + 800万円

例えば、勤続20年2か月の場合、勤続年数は21年になりますので、退職所得控除額は870万円(800万円+70万円×(21年―20年))になります。

 

この勤務年数には、試用期間、休職期間も含まれます。(仮に、勤務先が退職金規定で試用期間を支給対象としていない場合でも勤続年数には含まれます)

 

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/04/04.htm

#12 利子所得

#12 利子所得

利子所得とは、以下の所得を言い、税法では限定列挙(以下に該当しない限り、配当所得とはならない)されています。

預貯金の利子

公社債の利子

合同運用信託の収益の分配金

公社債投資信託の収益の分配金

公募公社債等運用投資信託の収益の分配

 

なお、ほとんどの利子所得は源泉徴収20・315%(所得税15.315%、住民税5%)され、確定申告をする必要がありません。確定申告をする必要があるのは、海外の預貯金利子、海外発行公社債の利子などで、日本の所得税として源泉徴収されていないものです。

利子所得の範囲

1.預貯金の利子は利子所得に該当します。また、会社員が社内預金をした際の利子も同様です。一方で、役員がする社内預金の利子は雑所得になります。

 

2.信託銀行の合同運用信託(金銭信託および貸付信託)の収益分配金は、利子所得に該当します。

 

3.証券投資信託のうち、公社債投資信託(株式や出資への投資は除く)からの収益分配金は、利子所得に該当します。MMF、MRF、中期国債ファンドなどが該当します。一方で、株式等投資信託からの配当は、配当所得に該当します。

 

4.証券投資信託以外の投資信託で、公社債等運用投資信託のうち、公募がなされているものからの収益分配金は、利子所得に該当します。私募債や非公社債からの収益分配金は配当所得に該当します。

 

利子所得の計算方法

利子所得 = 収入金額

収入金額は、源泉徴収される前の金額で計上します。

 

#13 山林所得

#13 山林所得

山林所得とは、山林を伐採して譲渡した場合の所得をいいます。また、立木のまま譲渡した場合の所得も山林所得に含まれます。山林所得は、他の所得と区別して税金を計算する分離課税方式(5分5乗方式)が採用され、優遇されています。

山林所得の判定

山林に係る所得であるものの、山林所得にならないものがあります。下の具体例を参考にしてください。

 

具体例

山林所得とならない取引例説明
山林を取得してから5年以内の譲渡山林所得ではなく雑所得になります。(山林売買業の場合は、事業所得です)
山林を山ごと譲渡山林部分については、山林所得、土地部分については、譲渡所得になります。
山林を育成、伐採、製材して譲渡育成から伐採までを山林所得、製材から譲渡までが事業所得になります。(※)

※製材業者が植林の上、伐採して製材、販売を行う場合、所得が二つに分かれます。植林から伐採までが山林所得に含まれますが、このときの山林所得の金額は、原木貯蔵場における原木の価額を基礎に計算することとされています。また、製材から販売までが事業所得に含まれますが、このときの事業所得の金額は、原木の価額を取得価額として計算することとされています。

 

 

非課税取引

相続により山林を物納した場合、債務弁済のための強制換価手続による譲渡がなされた場合、国や地方公共団体に対して贈与された場合などは非課税です。

 

 

 

山林所得の計算方法

山林所得は、総収入金額から必要経費と特別控除を差し引いて計算します。

山林所得 = 総収入金額 - 必要経費 - 特別控除 (-森林計画特別控除 )(-青色申告特別控除)

 

 

総収入金額に含めるべきもの

譲渡した金額を総収入金額に計上します。家事のために消費(自宅を建てるために使用)した場合は、その時の時価で総収入金額に計上する必要があります。収入を計上する時期については、引き渡しが済んでいない場合でも契約の効力発生日で計上することができます。

 

 

必要経費に含めることができるもの

≪原則≫

必要経費は、山林所得を得るためにかかった植林費、維持管理のために要した管理費、伐採するために要した伐採費、運搬して販売するために要した運搬費や仲介手数料が含まれます。

 

 

≪特例≫

必要経費は、上記のものを含めることが原則ですが、特例として概算経費控除を採用することもできます。これは、長期にわたる山林の管理について、必要経費を正確に算出することが難しい場合があるため、おおよその金額で経費を算出することを認める特例です。

 

概算経費控除は、15年前の12月31日以前から継続所有していた山林を譲渡するときに採用することができます。計算方法は以下の通りです。

概算経費控除額 = (総収入金額 - 譲渡費用) × 50% +譲渡費用

譲渡費用とは、伐採費や運搬費などです。

 

 

特別控除

≪原則≫

特別控除額は50万円です。なお、総収入金額から必要経費を差し引いた残額が50万円未満となる場合は、その残額となります。

 

≪特例≫

森林計画の対象となる山林で、その計画に基づいた伐採、譲渡がなされた場合、森林計画特別控除を受けることができます。特別控除金額は、収入金額から譲渡経費(伐採費、運搬費等)を差し引いた残額の20%です。(収入金額から譲渡経費を差し引いた残額が2,000万円を超える場合、超えた部分については10%になります)

 

≪青色≫

青色申告者の場合、山林所得から10万円の特別控除が認められています。(山林所得には、65万円の控除適用がありません)

 

 

 

税額計算

山林所得は、他の所得と分離して5分5乗方式により税額の計算を行います。

(山林所得金額 ÷ 5 × 税率) × 5